ハッピーエンドなんていらない
その質問に、わたしは答えに困ってしまった。
どこと言われても、どこなのか詳しくは言えないかもしれない。
だけど、憧れだというのは嘘じゃない。
いろんな意味で、紫苑はわたしの憧れだ。
湊に愛されるところも、人の幸せを優先するところも、いろんな意味で。
「…好きだって気付いたときには遅くって、タイミングよく肺炎なんて、まるで湊から遠ざけられてるみたいじゃん…」
…ああ、そのことで悩んでいたのか。
肺炎で入院することになってしまって、湊にメールも無視されてしまった。
会いに行くにも会いに行けないから、まるで遠ざけられているみたいで。
伝えちゃいけないのかな、だから神様が遠ざけてるのかな、とかいろいろ考えてしまっているのだろう。
…だけど湊は、きっと待ってる。
「遅くなんて、ないよ」
やっと、紫苑がこちらを見てくれた。
振り返った紫苑は怪訝そうな表情をして、わたしをジッと見つめた。
熱っぽくってだるそうだけど、わたしを睨みつける元気はあるみたい。