ハッピーエンドなんていらない
嘘言わないでよ、とでもいいたそうな目に怯むことなく、
「まだ、間に合うよ」
わたしははっきりとそう告げた。
湊の気持ちなんて、わたしに断言できるものじゃない。
だけど、これだけは、そう断言することができる。
…紫苑のために別れた彼が、簡単に紫苑を忘れられるとは思わない。
わたしがそうであったように、紫苑がそうであったように。
湊だって、紫苑への想いをなかなか消すことができなくて、消えなくて苦しんでるはずだから。
「神様はね、紫苑たちを遠ざけようとしているわけじゃないよ。
紫苑に、時間を与えたの。
湊にちゃんと、紫苑の想いが伝わるように」
ニコリと笑いかけるけれど、紫苑はまだ納得がいかなさそうだった。
ムッとした表情でわたしから目をそらしてしまった。
わたしは、湊への想いを整理する時間をくれたのだと、思うのだけれど。