ハッピーエンドなんていらない



嘘言わないでよ、とでもいいたそうな目に怯むことなく、

「まだ、間に合うよ」

わたしははっきりとそう告げた。


湊の気持ちなんて、わたしに断言できるものじゃない。

だけど、これだけは、そう断言することができる。


…紫苑のために別れた彼が、簡単に紫苑を忘れられるとは思わない。

わたしがそうであったように、紫苑がそうであったように。

湊だって、紫苑への想いをなかなか消すことができなくて、消えなくて苦しんでるはずだから。


「神様はね、紫苑たちを遠ざけようとしているわけじゃないよ。

紫苑に、時間を与えたの。

湊にちゃんと、紫苑の想いが伝わるように」


ニコリと笑いかけるけれど、紫苑はまだ納得がいかなさそうだった。

ムッとした表情でわたしから目をそらしてしまった。


わたしは、湊への想いを整理する時間をくれたのだと、思うのだけれど。

< 190 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop