ハッピーエンドなんていらない
じぃっと紫苑を見つめていると、そのうち紫苑がチラッとわたしを見た。
疑うような、でも確かめるような目でわたしを見つめる。
ぱちぱちとまばたきされた瞳から、ポロリと涙がこぼれ落ちた。
泣き腫らした赤い目。
もうすでにたくさん泣いただろうに、涙は枯れることなく溢れ出す。
「まだ、間に合う?」
心配そうに尋ねる声に、わたしは口角を上げて微笑んだ。
「きっと、間に合うよ」
少しだけ曖昧な言い方に、紫苑は一瞬ムッとした。
だからか、
「ちゃんと、伝わる?」
再び確かめるように、探るようにわたしにそう問いかけてきた。
わたしは紫苑の背中を押せるように、紫苑が安心できるような笑みを浮かべた。
「伝わるよ、大丈夫」
だから頑張れと、付け足す。
少しの間ムッとしたまま考え込んだ紫苑は、そのうちふっと笑みを浮かべた。
「そう、かな…」
わたしを見る目は、わたしを通して違う誰かを見つめていた。
…そうだよ。
心の中で、紫苑に答える。