ハッピーエンドなんていらない
やっと、なんとか元気が出たのか、紫苑は穏やかな笑みを浮かべた。
「うん、分かった、わたし、頑張るから。
だから、心の整理がついたら彩芽に連絡するから。
それが退院前だったら、湊のこと、ここに連れてきてもらっても、いいかな?」
紫苑は遠慮気味に問いかけるけれど、伝えろと言ったのはわたしだからもちろん断れるはずがない。
わたしはホッとして思い切り笑みを浮かべると、大きく頷いた。
何かを乗り越えたあとのような表情を浮かべる紫苑。
きっと、想いを伝える覚悟を決めたのだろう。
きっと間に合うから、たとえ間に合わなくても、想いを伝える覚悟が。
「分かった、待ってるから」
めいいっぱい笑いかけたわたしに、紫苑もふわりと笑みを浮かべた。
それから、少しの間話をして、帰ることとなった。
…大丈夫、紫苑なら大丈夫。
心の中でそっと、紫苑に、わたしに言い聞かせる。
わたしみたいに臆病じゃないからきっと、伝える勇気が消えたりしないからきっと。