ハッピーエンドなんていらない



湊は真剣に見つめるわたしを、しばらくジッと見つめ返していた。

そのうちギュッと拳を握りしめると、

「彩芽には、関係ないだろ」

冷たい声で、棘のある声で、そっと言い放った。


…関係なくない、わたしの親友が悲しむんだ。

ズキッと痛む胸に、わたしは心の中で反論した。

紫苑の幸せを願う気持ちの中に、ほんの少しフラッシュバックする昔の想いがグルグルと回る。


「紫苑のこと、なんで振ったりなんかしたの？」

わたしの問いに、湊の瞳がユラリと揺れた。

「…なんでって、言われても、別れたくなったから？」

湊は素直だから、うまく嘘なんてつけていなくって。

その言葉が嘘であることが、湊の困った顔からよく分かる。


「嘘つき。本当は、紫苑のことが大好きなくせに。

大好きだったから、紫苑のために別れたくせに」

ギュッと拳を握りしめてはっきり言うと、湊が心底驚いた顔をして、わたしから目をそらした。

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