ハッピーエンドなんていらない
湊は否定することなく、でも肯定することもなく下を向いていた。
湊はきっと、紫苑が自分を好きだなんて思いやしないだろう。
紫苑はきっと雪が好きだから自分なんて、そう思っているだろう。
ねえ、湊。
「わたしね、ずっと湊のことが好きだったんだよ」
人の気持ちなんて、いつかは色褪せて変わってしまうものなんだ。
ただそれに気付けなかったり、時間が経って褪せた想いを引きずったりするだけ。
自分が、気が付いていないだけ。
わたしの突然の告白に、湊は目を見開いてぱちくりさせた。
そりゃあそうだ。
わたしはずっと、湊への想いをひたすら隠してきたのだから。
湊がわたしの想いを、知っているはずがないのだから。
湊がパッとわたしの顔を見る。
「でもね、今は雪が好き。
雪と付き合ってから、雪のことを沢山知って、雪のことを好きになったの」
雪が好き、だなんて、改めて口にするとなんだか恥ずかしかった。
だけど堂々と、湊に語りかける。