ハッピーエンドなんていらない



わたしが伝えたいことがよく分からないのか、湊はキョトンとしていた。

首を傾げる湊に、わたしはニコリと笑いかけた。


「湊さ、一方的に別れを告げたんじゃないの?

紫苑の気持ち、ちゃんと確かめた?」

問いかけるわたしに、湊は思い出してからそっと首を振った。


…やっぱり、そうだろうと思った。

まあ、たとえあの時紫苑の気持ちを確かめていたとして、紫苑が湊を好きだと自覚できるか分からないんだけど。


「紫苑の気持ちが永遠に変わらないなんてこと、ないはずだよ」

その言葉でやっとわたしの言いたかったことを理解してくれた。


驚いた湊が、下を向いて、ほんの少しだけ笑みを浮かべた。

それは可能性を見出した笑み。

もしかしたら、彩芽が言うなら、そう思ってくれているかもしれない。

紫苑の親友の、わたしが言うなら。


「…今更じゃ、ないかな」

チラッとわたしを見やった湊に、わたしは思い切り微笑んだ。

「今更じゃあないよ」

< 202 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop