ハッピーエンドなんていらない



わたしは紫苑と湊が付き合ったとき、少しだけだけど後悔した。

湊が紫苑のことを好きなのは知っていたけれど、後悔したんだ。

わたしが先に伝えていれば、わたしの方に来てくれたかもしれないのにって。

そんな後悔、2人にはしてほしくないんだ。

大好きな2人だから。

わたしの初恋の人と親友、そんな大切な人たちだから。


「…もしダメだったら慰めてね」

「うーん、ゲームくらいしかできないけどいい?」

「それ彩芽がやりたいだけだろ」


笑う、顔をもうわたしは愛おしいとは思わないけれど。

それを愛おしいと思う人がいるのだから。

胸を張って、堂々と、想いを伝えればいいのだから。


「じゃあ、とりあえず部活行ってくる」

ひとしきり笑ったあと、ひらりと手を振った湊に、笑いかけてわたしも手を振った。

「うん、ごめんね、時間とっちゃって」

そう言うと湊は満面の笑みを浮かべて、

「ううん、むしろ、ありがとう」

なんて言うから、どうしようもなく胸が苦しくなった。


…お礼を言うのはわたしの方だ、全部わたしのわがままなんだから。

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