ハッピーエンドなんていらない



湊は本当に、思っていることが顔に出やすいんだから。

「ほら、とりあえずこれ持って」

病室に向かっている最中、雪が湊にビニル袋を手渡した。

首を傾げながら袋を受け取った雪は、次にそっとわたしの手を取った。


「おれらは談話室行ってるから、先に2人で話しておきなよ」

そうして湊の返事を待たず、スタスタとわたしの手を引いて歩いていく。


湊が去りゆくわたしたちの背中に「待って」と慌てて声をかけていたけれど、雪は手を振るだけでそのまま去ってしまった。


「いいの?湊、絶対拗ねるよ」

雪に尋ねるも、雪は気にせず談話室のあるところまで歩いていった。


談話室にはちょうど、人があまりいなかった。

まったくいないわけではないが、向こうは向こうでワイワイと楽しそうにしている。


そんな中、隅の方を選んで雪が腰掛けた。

手を引かれていたわたしも、もちろん同じところに腰掛ける。

< 207 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop