ハッピーエンドなんていらない
湊は本当に、思っていることが顔に出やすいんだから。
「ほら、とりあえずこれ持って」
病室に向かっている最中、雪が湊にビニル袋を手渡した。
首を傾げながら袋を受け取った雪は、次にそっとわたしの手を取った。
「おれらは談話室行ってるから、先に2人で話しておきなよ」
そうして湊の返事を待たず、スタスタとわたしの手を引いて歩いていく。
湊が去りゆくわたしたちの背中に「待って」と慌てて声をかけていたけれど、雪は手を振るだけでそのまま去ってしまった。
「いいの?湊、絶対拗ねるよ」
雪に尋ねるも、雪は気にせず談話室のあるところまで歩いていった。
談話室にはちょうど、人があまりいなかった。
まったくいないわけではないが、向こうは向こうでワイワイと楽しそうにしている。
そんな中、隅の方を選んで雪が腰掛けた。
手を引かれていたわたしも、もちろん同じところに腰掛ける。