ハッピーエンドなんていらない



雪は席につけてホッとしたのかなんなのか、わたしの手を離してはぁと長いため息をついた。


「…疲れた、意外と距離あるのに何が近いだよ…」

雪がポロッとこぼした愚痴に、わたしはえへへと苦笑いにも近い笑みをこぼした。


確かに距離はあるけれど、と心の中で雪に突っ込む。

ちなみに近いという発言をしたのはもちろんわたしだ。

雪は部活のせいでなかなか行けず、わたしだけが紫苑のところに行っていた。

とはいえ頻繁に行ってたわけではないんだけど、わたしは学校帰りのため歩いてここに来ていた。

だから近いと思っていたのだが、意外と距離があったらしい。

バスもあったけど、お金かかるもんなぁ。

それにしても、帰宅部のわたしより運動部の雪の方がバテるなんて、思わなかったな。


「ごめんね、ジュース買うから許して」

財布を持って立ち上がると、雪がわたしの手首をパッと掴んだ。

「ジュースはいらないから、ちょっと、話そう」

< 208 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop