ハッピーエンドなんていらない
雪は席につけてホッとしたのかなんなのか、わたしの手を離してはぁと長いため息をついた。
「…疲れた、意外と距離あるのに何が近いだよ…」
雪がポロッとこぼした愚痴に、わたしはえへへと苦笑いにも近い笑みをこぼした。
確かに距離はあるけれど、と心の中で雪に突っ込む。
ちなみに近いという発言をしたのはもちろんわたしだ。
雪は部活のせいでなかなか行けず、わたしだけが紫苑のところに行っていた。
とはいえ頻繁に行ってたわけではないんだけど、わたしは学校帰りのため歩いてここに来ていた。
だから近いと思っていたのだが、意外と距離があったらしい。
バスもあったけど、お金かかるもんなぁ。
それにしても、帰宅部のわたしより運動部の雪の方がバテるなんて、思わなかったな。
「ごめんね、ジュース買うから許して」
財布を持って立ち上がると、雪がわたしの手首をパッと掴んだ。
「ジュースはいらないから、ちょっと、話そう」