ハッピーエンドなんていらない
ふわりと笑みを浮かべると、頬が熱を帯びていくのを感じた。
じわじわと帯びていく熱、それは雪もおんなじようで。
机に今にも伏せてしまいそうな姿勢で、頬を赤く染めている。
それでもまだ疑うような視線に、わたしはぐいっと雪に近付いた。
そうしてそっと、その頬にキスを落とした。
軽いリップ音は、騒がしい部屋の中に掻き消えていく。
雪の肌ってすべすべなんだなとか、柔らかいなとか、そう思って、離れて、改めて恥ずかしくなる。
サッと唇を手で覆って、頬を真っ赤に染めた雪から慌てて目をそらす。
「…不意打ちは、ねえわ…」
「その、ごめんね…?」
えへへと笑って謝ると、雪は大きくため息をついて机に伏せてしまった。
「おれさ、彩芽が湊好きなら別れようかなとか、思ってて、正直彩芽はまだ湊好きだと思ってたから」
「うん」
少し顔を上げてそう言った雪に、わたしは相槌を打つことしかできなかった。