ハッピーエンドなんていらない
「だから、ほんと、彩芽がおれを好きだとか正直信じられねえんだけど。
…信じても、いいんだよね?」
チラッと目線を上げた雪と、パチリと目があって胸が高鳴る。
だんだんと早くなる鼓動、体は本当に心以上に正直だ。
悩んでごちゃごちゃとした頭の中よりもずっと正直だ。
「信じて、わたしは、雪が好き」
伝わるように、伝えたいコトを、口からポロリと吐き出した。
ゆるりと上がる、雪の口角。
ふんわりと浮かべられた笑顔は、わたしの心を穏やかに侵食していく。
ふわふわとしたシャボン玉みたいなものが、心の中を埋めていく。
つられて、わたしも笑みを浮かべた。
「…その、これからも、よろしくお願いします…」
照れて目をそらしたまま、すっと差し出された手を、わたしは優しく握った。
「よろしく、お願いします…」
声を震えを抑えながら、なんとか口にする。