ハッピーエンドなんていらない



「だから、ほんと、彩芽がおれを好きだとか正直信じられねえんだけど。

…信じても、いいんだよね?」

チラッと目線を上げた雪と、パチリと目があって胸が高鳴る。

だんだんと早くなる鼓動、体は本当に心以上に正直だ。

悩んでごちゃごちゃとした頭の中よりもずっと正直だ。


「信じて、わたしは、雪が好き」

伝わるように、伝えたいコトを、口からポロリと吐き出した。


ゆるりと上がる、雪の口角。

ふんわりと浮かべられた笑顔は、わたしの心を穏やかに侵食していく。

ふわふわとしたシャボン玉みたいなものが、心の中を埋めていく。

つられて、わたしも笑みを浮かべた。


「…その、これからも、よろしくお願いします…」

照れて目をそらしたまま、すっと差し出された手を、わたしは優しく握った。

「よろしく、お願いします…」

声を震えを抑えながら、なんとか口にする。

< 213 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop