ハッピーエンドなんていらない
湊と紫苑はまたいつものように、腕を絡めて前を歩き始める。
わたしと雪は恋人つなぎをして、そんな2人のあとを追うように歩く。
「…カップルって、こんな無言で歩くものだっけ?」
恐る恐る聞いてきた雪に、わたしはサッと目をそらした。
「今頑張って話題を探してるんだって、ほら、今週末どっか行きたいなぁとか」
確か今週末なら雪も部活がないはずだと思いそう言うと、雪はそうだねと笑った。
「彩芽は、どこ行きたい?」
「どこでもいいよ。近くの公園とか、雪の家とか」
「近場がいいのね」
考えとく、と雪はわたしの頭をポンポンと軽くなでた。
その手が優しく、触れるか触れないかくらいで、まだ雪が気を遣ってることに気が付いた。
「…雪さ、気を遣ってる?」
ふと問いかけると、雪はほんの少し苦笑いをした。
「遣うに決まってるじゃん」