ハッピーエンドなんていらない



その日の放課後、図書室に向かい早速本を読み始めたところで扉が開いた。

いつもは人がいない、もしくは少ない図書室への来客に驚き目を向けると、そこには荷物を持った紫苑が立っていた。


「え、紫苑、今日から部活でしょう?」

声をかけて駆け寄ると、紫苑は自慢げにピースサインをした。

「病み上がりなんでって言って休んできちゃった!」

わざとらしく語尾を弾ませた紫苑に、わたしは呆れ顔でため息をこぼした。

…要するに、サボってきたというわけね。


病み上がりだけど希望すれば見学させてもらえるというのに、なんでまたサボったりなんか。

まあ理由は聞かなくても分かっているんだけど、ただ珍しくって。

行きたくなくてもそれでも紫苑は部活に足を運ぶ人だから、何か言われたりしたのかと心配になった。


しかし、杞憂だったようだ。


「ほら、ね、もうすぐバレンタインデーじゃん?」

きゃっきゃと楽しそうに話し始めた紫苑に、なんとなく言いたいことを察した。

そうして「もしかして」と聞くと、紫苑はふっと笑みを浮かべた。


「そう、今年は彩芽と一緒に何か作りたいなと思って!」

< 219 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop