ハッピーエンドなんていらない
その日の放課後、図書室に向かい早速本を読み始めたところで扉が開いた。
いつもは人がいない、もしくは少ない図書室への来客に驚き目を向けると、そこには荷物を持った紫苑が立っていた。
「え、紫苑、今日から部活でしょう?」
声をかけて駆け寄ると、紫苑は自慢げにピースサインをした。
「病み上がりなんでって言って休んできちゃった!」
わざとらしく語尾を弾ませた紫苑に、わたしは呆れ顔でため息をこぼした。
…要するに、サボってきたというわけね。
病み上がりだけど希望すれば見学させてもらえるというのに、なんでまたサボったりなんか。
まあ理由は聞かなくても分かっているんだけど、ただ珍しくって。
行きたくなくてもそれでも紫苑は部活に足を運ぶ人だから、何か言われたりしたのかと心配になった。
しかし、杞憂だったようだ。
「ほら、ね、もうすぐバレンタインデーじゃん?」
きゃっきゃと楽しそうに話し始めた紫苑に、なんとなく言いたいことを察した。
そうして「もしかして」と聞くと、紫苑はふっと笑みを浮かべた。
「そう、今年は彩芽と一緒に何か作りたいなと思って!」