ハッピーエンドなんていらない



少しして雪と湊が迎えに来るまで、2人でいろいろと話していた。

紫苑が休んだことを雪たちが知っているのか少し不安になったけど、時間にちゃんと来てくれた。

湊によれば、予め紫苑から部活を休むと言われていたらしい。


準備を整えて4人で帰る。

久々の4人での下校だけど、自然と湊と紫苑が並んで前をゆく。

そのうしろを、わたしと雪と、手を繋いで追っていく。


「あ、そうだ」

前の2人には聞こえないくらいの声で、雪がそっと呟いた。

そうしてチラリとこちらを見る。


わたしはどうしたのだろうと不思議に思い、小さく首を傾げて雪を見た。

雪はわたしを見つめたまま静かに微笑んで、少しだけ言いにくそうな顔をした。


「彩芽がよければなんだけど、今週の土曜日、おれの家に来ない?」

雪の提案にわたしは少しだけ驚いて目をそらした。

…雪の家なんて、半分冗談で言ったつもりだから、まさか本当に誘われるとは思わなくて。

嫌なわけじゃない、むしろ嬉しい。

ただ目をそらしたのは恥ずかしいからだ。

< 227 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop