ハッピーエンドなんていらない



しかし嫌だったと勘違いされてしまったらしく、雪は眉を下げると、

「嫌なら別にいいんだけど」

悲しそうな声色でそう言って、わたしの髪を優しくなでた。

どこか寂しそうな行為に思わず、

「行く!」

食い気味にそう答えてしまう。


いきなり、食い気味に返答したわたしに、雪はおかしそうに吹き出した。

そうして堪えきれないのか、しばらくクスクスと笑っていた。


「それじゃあ、お昼に来てもらっていい?」

雪と問いかけにもちろんと頷いたわたしは、雪の腕に自分の腕を絡めた。

ドクドクと高鳴る胸の音を隠すように、深呼吸を何度も繰り返す。


それが週の始まりの月曜日のことで、永遠に感じるほどに長い1週間を過ごすことになった。

楽しみなことがあればあるほど時間は長くなっていく。

そのくせ楽しい時間は一瞬に感じられるほどに短いから、嫌になる。


まあでも、長い前置きがあるからこそ、楽しい時間を楽しいと感じられるのだけれど。

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