ハッピーエンドなんていらない
むしろラッキーだと思っているのだから、嫌なわけがないじゃないか。
ただ、すっかり忘れてしまっていたから驚いただけのことであって。
「別に、嫌じゃないよ」
ふわりと笑うと、雪は安心したように微笑んでくれた。
雪に招かれて、久々に雪の部屋を訪ねる。
記憶のほんの片隅にある雪の部屋とはまた大きく違っていた。
1人寂しく家で待つ雪のためにと置いてあった玩具もなく、シンプルな部屋だ。
高校生らしく、置かれた本棚には参考書や教科書が並んでいる。
それを見て、わたしも、雪も、あの頃よりずっと成長したんだなぁと思った。
昔の部屋しか知らない頃のわたしは、もちろん雪は、まだまだ幼くて付き合うとか分からなくて。
まさか自分が雪と付き合うことになるとは思わなかっただろう。
湊を好きだと知った頃のわたしは、まさか雪を好きになるなんて思っていなかっただろう。
「部屋、広いね」
昔よりも狭いようで広く見えて、わたしはぽつりと呟いた。