ハッピーエンドなんていらない
そう問いかければ、雪は嬉しそうな顔をして頷いた。
早速わたしの家に電話をしてそのことを伝えてから、家にある食材で何を作るか考えた。
そこからもう楽しくて、きっと雪と一緒だから楽しくて。
ふふっと笑み浮かべると、雪は不思議そうな顔をして首を傾げた。
「なんか、楽しそうだね」
どうしたのと問いかけてくる雪に、
「なんだか、新婚さんみたいだなぁと思って」
クスッと笑いながらそう答えた。
雪は恥ずかしそうに頬を赤らめて視線をそらすと、はいっと食材を渡してくる。
それをわたしは丁寧に包丁で切っていった。
あまり料理はしないから、なかなか包丁は慣れないけれどやっぱり楽しい。
そう思っていたとき、
「彩芽」
トントンと肩を叩かれて、反射的に振り返った。
すぐ近くにいた雪のパチリと目があったかと思えば、わずかに唇が触れる。
本当にただかすかに触れるだけの、とても短いキス。