ハッピーエンドなんていらない



そう問いかければ、雪は嬉しそうな顔をして頷いた。


早速わたしの家に電話をしてそのことを伝えてから、家にある食材で何を作るか考えた。

そこからもう楽しくて、きっと雪と一緒だから楽しくて。


ふふっと笑み浮かべると、雪は不思議そうな顔をして首を傾げた。

「なんか、楽しそうだね」

どうしたのと問いかけてくる雪に、

「なんだか、新婚さんみたいだなぁと思って」

クスッと笑いながらそう答えた。


雪は恥ずかしそうに頬を赤らめて視線をそらすと、はいっと食材を渡してくる。

それをわたしは丁寧に包丁で切っていった。

あまり料理はしないから、なかなか包丁は慣れないけれどやっぱり楽しい。


そう思っていたとき、

「彩芽」

トントンと肩を叩かれて、反射的に振り返った。


すぐ近くにいた雪のパチリと目があったかと思えば、わずかに唇が触れる。


本当にただかすかに触れるだけの、とても短いキス。

< 235 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop