ハッピーエンドなんていらない



ゆっくりと離れて、目が合って頬が火照っていく。

じわじわと体温が上がっていくのを感じながら、わたしはジッと雪を見た。


「不意打ちは、ズルい」

ムッとしてそう言うと、雪がおかしそうに吹き出した。

「彩芽が新婚さんみたいだなんて言うから」

ニヤニヤと笑う雪に、理由になってないと頬を膨らました。


しばらくそっぽを向いて食材を切っていると、雪がそっと後ろから抱きしめてきた。

ギュッと込められる力に、わたしはふっと笑みを浮かべる。


「雪、大好き」

そう言えば、雪はクスリと笑って、

「おれも」

そう言ってさらにギュッと抱きしめてきた。

雪の温もりを背中に感じながら、わたしはまたふふっと微笑んだ。



「ずっと、一緒にいたいなぁ」

願うように呟いたわたしに、雪はふっと微笑むだけで。

幸せを噛みしめるように、わたしも思い切り微笑んだ。

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