ハッピーエンドなんていらない



「寝よう」

ふと呟いて、机に伏せて目をつむった。


時間まで寝てしまっても、大して問題はないだろうし。

提出しなきゃいけない課題はもうすでにやってしまったし。

かといって、新しく出された課題もないわけだし。


そう思い半分起きているつもりで目をつむったのだが、気が付けば寝ていたらしい。


なにか、短い夢を見た。

幼い少女と少年が2人寄り添って、岩の上に並んで座っている。

穏やかな波の音を聞きながら、2人はそっと手を繋いで、顔も合わせないまま海を見る。

その海は、どんな色をしていたっけ。

エメラルドグリーンなんてそんな綺麗な色じゃなくて、深い藍色をしていた気がする。

それはまるで海の上ながら、海の底のような深く暗い藍色だ。


トントンと肩を叩かれ、その景色が薄れ消えていく。

呼び戻された意識が、わたしを呼ぶ声を捉えた。


「彩芽」

優しく呼ぶ声に、わたしはパチリと目を開いた。

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