ハッピーエンドなんていらない
材料は買いに行った時に紫苑の家に寄って置いてきたため、持ち物はほとんどない。
まあ、あったとしても自転車でいけばものの数分でつくため、取りに帰ればいいかな。
インターホンを押して、出てきた紫苑のお母さんに挨拶をして家に上がる。
紫苑と少し話をしてから、2人並んで台所に立った。
タブレットでまずは生チョコ、それからトリュフの作り方を開く。
そうして材料を用意して少しずつ作り始めた。
2人とも生チョコもトリュフも作るのは初めてだったため、なかなかうまく作業が進まない。
だけど、明日が楽しみだとか、喜んでくれるかなとか、そんな話をしていれば苦ではなくて。
いや、もともとも誰かに渡すためにそう作業すること自体が苦じゃなくて。
「生クリームにチョコレートって甘そうだよね」
「もともとチョコが甘いしね…って、勝手に味見しないでよ、紫苑」
「いいのいいの、減るもんじゃないし」
「減るよ」
たわいない会話をして笑い合いながら作業を進める。