ハッピーエンドなんていらない
半分で生チョコを、もう半分でトリュフを作っていく。
淡々とこなしていくわたしに、紫苑はすごいと言うばかり。
「やっぱり、彩芽はすごいなぁ」
尊敬するような声に、やっぱりという言葉に、違和感を覚えて紫苑を見た。
紫苑はふわりと笑みを浮かべたまま、ユラユラ揺れる瞳でわたしを見つめていた。
それは、あと固まるのを待つだけになった頃だった。
1時から開始したのに、あれやこれやとやっているうちに4時くらいになっている。
「わたしは、全然すごくなんかないよ」
むしろ紫苑の方が、そこまで言いかけて言葉をやめた。
紫苑がわたしを見つめて、優しくいつもとは違う大人っぽい笑みを浮かべていたから。
「彩芽はね、すごいよ。
わたしがまた湊と付き合えたのは彩芽が背中を押してくれたからなの。
すごくね、感謝してる」
ありがとう、と笑った紫苑の笑顔はキラキラとしていて、こちらまで笑顔になる。