ハッピーエンドなんていらない
あまり待たせないように、雪が家の外に出た瞬間に袋を兄に押し付けた。
「バレンタインデーのチョコ、今年はちゃんと作ったから」
初めて作った生チョコとトリュフ。
好きな人と同じものをあげるのはと思ったが、まあ家族だしノーカウントだ。
それに、初めて作ったんだから、家族にも食べてもらいたいし。
兄は嬉しそうな顔をしてサンキュと軽く言うと、去ろうとしたわたしの肩に手をおいた。
振り向くと兄はふわりと優しい笑みを浮かべていて、雪のいる方を見ていて。
「良かったよ、また4人が昔のように戻ってくれて。
ほんと、心配してたんだからな」
それだけ伝えてトントンと肩を叩くと、くるりとわたしに背を向けた。
わたしはそんな兄にふふっと笑みを浮かべると、
「ありがとう、心配してくれて」
それだけ伝えて家の外、雪の元へと走り出した。
綺麗に整えた髪が崩れてしまわないように気を遣いながら、なぜか家の前より少し向こうに行ってしまった雪のもとに駆け寄る。