ハッピーエンドなんていらない
「家の前で待っててくれればよかったのに」
ムッとしながらそう言うと、雪はふっと笑みを浮かべて、わたしの手をとる。
その仕草一つ一つにドキドキとして、心臓が破裂してしまいそうだ。
「家の前にいると、少しだけど中の話が聞こえてくるんだよ」
「え、うそっ」
「ほんと」
まさか聞かれると思っておらず驚くわたしに、雪は意地悪にクスッと笑った。
これからは、玄関で話すのはなるべく控えよう。
そう心に決めて、わたしは雪の手を優しく握り返した。
手袋を忘れてしまったわたしの手は冷えていて、手袋越しに雪の手の温もりを感じていた。
集合場所についたのは集合時間の1分前で、もうすでに紫苑たちがいた。
遅刻してこなかったことになぜか落胆する紫苑を、湊がからかうように笑う。
2人の手が、自然と繋がれる。