ハッピーエンドなんていらない



「家の前で待っててくれればよかったのに」

ムッとしながらそう言うと、雪はふっと笑みを浮かべて、わたしの手をとる。

その仕草一つ一つにドキドキとして、心臓が破裂してしまいそうだ。


「家の前にいると、少しだけど中の話が聞こえてくるんだよ」

「え、うそっ」

「ほんと」

まさか聞かれると思っておらず驚くわたしに、雪は意地悪にクスッと笑った。


これからは、玄関で話すのはなるべく控えよう。

そう心に決めて、わたしは雪の手を優しく握り返した。


手袋を忘れてしまったわたしの手は冷えていて、手袋越しに雪の手の温もりを感じていた。


集合場所についたのは集合時間の1分前で、もうすでに紫苑たちがいた。

遅刻してこなかったことになぜか落胆する紫苑を、湊がからかうように笑う。

2人の手が、自然と繋がれる。

< 246 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop