ハッピーエンドなんていらない
わたしは頬をふくらまして、いいじゃんと言ってまたアイスを口に運ぶ。
温かいカフェオレを飲む雪を見て、そろそろいいかなと思ったわたしは、手を止めて鞄を漁った。
チョコが丁寧に入れられた箱を手にとって、どうしたのかと首を傾げる雪の目の前に差し出した。
雪は少しだけ驚いてから、嬉しそうに微笑んでチョコを受け取る。
「バレンタインデーだから、その、紫苑と作ってきたの」
目をそらしながら告げたわたしに、雪はふふっと笑った。
「ありがとう」
優しく笑って見せてから、箱に添えてあったメッセージカードを手に取る。
ただ、「好き」とか「ずっと一緒にいようね」とかが書かれているだけのはずなのに、雪はまじまじとカードを見た。
そうして、悲しそうに笑う。
「本当はさ、彩芽に、伝えなきゃいけないことがあって」
真剣な顔、暗い声、嫌な予感がしてくる。
…もしかして、もう、わたしのことなんて…。
心臓の音がだんだんとうるさくなるのを感じていると、雪は「そうじゃないよ」と微笑んだ。
わたしの考えは読まれていたらしい。