ハッピーエンドなんていらない
自分の思いをなんて言葉にすればいいか分からなくて、わたしは黙ってしまった。
雪は少し困ったように笑って、机の上に置いてあったわたしの手を自分の手で包み込んだ。
冷えた手に、じわっと温もりが伝わってくる。
「じゃあ、別れる?」
次の瞬間雪の口から飛び出したのは、予想もしていなかった言葉だった。
理解できずに目を見開いて見つめるわたしに、雪はクスッと笑った。
「1年経ったら、ちゃんとここに迎えに来るから。
そのとき、彩芽に他の好きな人がいたら、おれは諦めるから」
その言葉で、不安そうな雪の顔で、雪だって不安であることに気が付いた。
雪も、わたしと同じように怖いんだ、知らぬ間に変わっていく思いが。
気付けば風化していく思いにすがって、自分には恋人がいるのにと言い聞かせてしまうことが。
そうじゃなくて、そうじゃなくて、ただの好きな人であってほしいんだ。
ずっと、自分のことを好きでいてほしいんだ。