ハッピーエンドなんていらない



わたしたちの価値観はよく似ている。


「待ってるから、わたしも、雪に好きな人ができてたら諦めるから、」

泣きそうになって言葉につまる。

震える声を絞り出して、なんとか言いたいことを口にする。

それでもこらえきれずに溢れ出した涙を、雪が優しく拭ってくれた。


「泣かないでよ、ちゃんと迎えに行くから」


困ったなぁと言って眉を下げ笑う雪に、わたしはコクコクと頷いた。


…わたしだってなんで泣いているか分からないんだけど、涙が流れてくるんだ。

きっと、雪に会えなくなってしまうから、それが悲しいから。

たとえ1年という短い期間であっても、会えないことが寂しいんだ。


「待ってる、迎えに来るの、待ってる」


待ってるからと何度も繰り返す。


「でも、ちゃんと、自分の想いを優先してね」

涙を拭いながら笑うと、雪もくしゃっと笑ってまたわたしの髪を撫でた。

「彩芽こそ、あまり遠慮しすぎるなよ」


…どうか、わたしの想いが、雪の足枷になりませんように。

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