ハッピーエンドなんていらない
2.
「…秋祭り、か」
部屋の片隅に添えつけられた鏡を見ながらそう呟いた。
大人っぽいイヤリングを選んでつけて、また1つため息をつく。
ため息、ついてばかりだ。
まあ、逃げるほどの幸せも持ち合わせてないからいいんだけど。
秋祭り、だけれど、毎年わたしたちは浴衣を着ていっている。
夏祭りとは違う、トンボの描かれた濃いオレンジ色の浴衣だ。
毎年着ていくものだから、お母さんが気を利かせて買ってくれたのだ。
いつもおろしている肩より少し長い髪を横で結ぶ。
色の入ったリップを塗って、ちょっと大人ぶってみる。
湊が少しでも見てくれたらなぁなんて。
…消したいのに、思えばいつも湊ばかり。
ダメなのに、湊は紫苑の彼氏なのに。
視界が滲む。
今から家を出るんだから泣いちゃダメだと涙をこらえる。