ハッピーエンドなんていらない



…雪に、会いたい。


「彩芽、早く行こう」

紫苑に声をかけられ、ごめんと軽く謝って2人を追いかける。

だけどその前にと一度だけ人波の方を振り返って、それでもいないから走り出して。

まだ2人に追いつかないうちに、わたしの後ろから誰かが抱きついた。


がっしりと腰に回された手のせいで、後ろに引かれ倒れそうになる。

だけどわたしを引き寄せた誰かがしっかりと支えてくれた。



「 迎えに来たよ 」


優しく囁く声に、ドキッと心臓が高鳴った。

密着した背中から、彼にそれが伝わってしまうのではないかと思うほどに大きく鳴る。


会いたかったすら声にならないまま、わたしは抱きつく彼を一度はがして振り返った。


聞くたびにわたしをドキドキとさせたその声が、誰のものか間違えるはずもなくて。

わたしはチラッと顔を見てから、ギュッと彼を抱きしめた。

彼もわたしを強く抱きしめ返してくれる。

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