ハッピーエンドなんていらない
雪だ、雪がいる。
わたしが、会いたくて会いたくてたまらなかった雪がいる。
「会いたかったっ、」
ぎゅうっと抱きしめる手に力を込めると、彼は、雪はははっと笑ってわたしの髪を撫でる。
いわば雪の癖みたいなもので、よくそうやって撫でてくれた。
「彩芽、おれはまだ彩芽のこと好きだよ」
愛おしそうにわたしの名前を呼んだ雪は、顔を上げたわたしにニコリと微笑む。
その言葉に、じわっと視界が滲んでいく。
「わたしも、好きだよ」
なんとか言葉を発すると、雪は少しだけ驚いて、これでもかと言うくらいわたしを抱きしめた。
少し苦しいくらいが、なんだか心地よい。
いくらかまばたきをすると、こらえきれなかった涙が溢れ出した。
「泣かないでよ、ちゃんと迎えに来たんだから」
そっとわたしの涙を拭う雪に、わたしはふふっと微笑む。
「ずっと、待ってたんだから、寂しかったんだから」
しばらく見つめ合ったわたしたちは、また触れるだけのキスを交わした。
なんだか照れくさくって頬を染める彼が、たまらなく愛おしくて。
わたしはその頬にもキスを落とした。