ハッピーエンドなんていらない
どうしようもなく泣きたくなったことは言うまでもない。
「とりあえず、ツリーでも見に行こうか」
いつものように4人で過ごすクリスマス。
小学生の頃から何年も積み重ねてきた想いが、一瞬で打ち砕かれたクリスマス。
何か言いたそうなのは、雪も同じだった。
前をゆく2人の後ろを歩く、わたしの隣を歩く雪。
男のくせに色素の薄い、名前の通り雪みたいに真っ白の肌。
寒さのせいか鼻だけが赤くなっていて、心なしか悲しそうな目で2人を見つめた。
そんな雪が、不意に言ったのだ。
「おれ、紫苑のことが好きだった」
嘘か本当かは知らない。
けれど、わたしにとってはそれで十分だったのかもしれない。
「そう」
でも、わたしは言わなかった。
同じだねとも、わたしも湊が好きだったとも。
ただこの日、冷たい風に息が苦しくなるように、この関係に息苦しさを感じた。
その息苦しさが、亀裂が入った証拠であることも知っていた。
もうこの時点で、わたしたちの関係は氷のように脆く薄くなっていったのかもしれないね。