ハッピーエンドなんていらない
紫苑は可愛らしい分、わたしは大人っぽくありたかった。
紫苑の可愛さに、わたしが霞んでしまうのがどうしても嫌で。
だって、霞んだら湊が見てくれないから。
…何もかも、気づいたときには無意味だったんだけど。
「紫苑は、ほんとかわいらしいよね」
褒め言葉が、すんなりと口から出てしまう。
それくらい、魅力のある紫苑が羨ましい。
「そう?彩芽には敵わないけどね」
わたしに背を向けて湊の方に向かう彼女に、胸がズキッと痛んだ。
敵わないのは、わたしの方だ。
「そろそろ、行こうか」
そう言って歩き出した湊の隣にサラッと並ぶ紫苑。
それが、どんなに羨ましいか。
敵わないのは、わたしの方。
「彩芽は、何か食べたいものとかある?」
「え、あ、わた菓子…とか?」
雪にいきなり声をかけられて、ハッとした。
考えすぎないで、今はとりあえずお祭りを楽しまないと。