ハッピーエンドなんていらない



「雪って、あまいの好きだもんね」

ふふっと笑うと、雪はそうだなあと笑い返した。


「彩芽が、好きだからかもな」

へへっと笑う雪に、「なにそれ」とムッとする。

雪は冗談と言って、屋台を見回っていた。


…あまいものなら、紫苑だって好きだ。

さっきの雪の言葉は聞かなかったふりをして、わたしも屋台を見回る。

わた菓子を、買ってから。

あまくてふわふわとしたソレを口に頬張っていると、どこからか来た彼がわたしのから少しつまみ食いをする。

「あ、ちょっと…」

「んー、あまっ!」

幸せそうな顔をしながら、わたしのわた菓子を頬張った湊に、思わず笑みがこぼれる。

瞬間によぎる罪悪感。


「紫苑、は…?」

名前を呼ぶ声が少しだけ震えた。

嫌だ、紫苑のところに帰らないでと、心の隅でわたしが叫ぶ。

「あー、雪と焼きそば買いに行った」

食いしん坊なんだよな、と笑う湊に、そうだねと笑い返す。

チクリ、と胸が痛む。

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