ハッピーエンドなんていらない
それはきっと、湊の側にいることへの、罪悪感。
それから、湊の側にいたいというわたしの欲。
「ねえ、湊」
声をかけちゃダメだと、言い聞かせているのに。
声をかけてしまえば自分が抑えられなくなると分かっている。
「んー、なに?」
もっと一緒にいたいとか、わたしにもっと笑いかけてほしいとか、そういう欲が止まらなくなるの、分かってるのに。
「…わたし、唐揚げ食べたいな」
口が勝手に言葉を紡ぎ出す。
食べたいって、わた菓子を持っている今言う事じゃあないのに。
「わた菓子あるのに?」
「だって、食べたいんだもん」
子供みたくわがままを口にするわたしに、湊はクスクスとおかしそうに笑った。
「仕方ないなあ、おれが買ってきてやるよ」
待ってろよ、と言って去っていく湊の背中を、つかもうと伸ばした手は空振りした。
それでも人が流れるここで、1人立ち竦んでいるわたしは、馬鹿かもしれない。
「…買ってくるなんて、言うとは思わなかったなぁ…」