ハッピーエンドなんていらない
戻ってきた湊は唐揚げを片手に持っていた。
そうしてその中の1つををわたしの口に押し込んだ。
「…!むぐっ…」
いきなり押し付けられモグモグと噛んでいると、湊も1つを口に含む。
「あー、うまっ」
幸せそうな顔をして唐揚げを食べる湊を見てると、なんだかこっちまで幸せになる。
「…お金、いくらだった?」
さすがに奢らせるわけにはとそう聞いてみたが、
「えー、いいよ、おれも半分もらうし」
湊はそんなことを言いながらもう1つ、唐揚げを口に運んだ。
それでも半分はわたしが食べるんだし、払わせてほしかったかな。
むぅっと頬を膨らまして、唐揚げを1つ奪い頬張ると、湊はまたクスクスと笑った。
「彩芽も、食いしん坊だな」
ケラケラと笑いながら、髪が崩れないようにポンポンと優しくたたく。
「うるさいなぁ…」
本当は嬉しいくせに、素直になれない、素直にならない。