ハッピーエンドなんていらない



少しして雪と紫苑が楽しそうに話しながら戻ってきた。

チラッと横目で見た湊が、一瞬悲しそうな顔をして、また笑みを浮かべた。

紫苑と、雪を見て、悲しそうな顔をしたんだ。


「焼きそば美味しかったぁ」

ほんわかとしか無邪気な笑顔を浮かべる紫苑に、湊がそっかと笑った。

買ってくるだけじゃなくてもうすでに食べてきたらしい。


雪から離れた紫苑が、湊に抱きついて腕を絡める。


複雑に入り混じる気持ちを誤魔化すために、わた菓子を口に含んだ。

そのわた菓子があまりに甘くて、なんだか無性に虚しくなった。


結局もうすぐにわた菓子がなくなってしまって、少し歩いたところに見えるチョコバナナに目をやった。


「…彩芽、チョコバナナ食べたいの?」

あっさり雪にバレてしまい、雪がニヤニヤしながら問いかけてきた。

それにそっぽを向いて、「別に」とこぼす。

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