ハッピーエンドなんていらない
でも、わたしには紫苑の幸せを祈ることしかできなくて。
湊への気持ちはいつか封印しなくちゃいけなくって。
本心じゃなくてもわたしは主人公の親友ポジで、紫苑のハッピーエンドを願うだけ。
「それで、何食べるの?」
雪に声をかけられて我に返る。
「えっと、フライドポテト…かな」
甘いチョコバナナを口に押し込んだ。
全部食べてしまってから、ゴミを捨てるついでに雪とポテトを買いに行く。
みんな花火の場所取りに行ったのか人が少なくなっていて、すぐに買うことができた。
…塩が効いていて、しょっぱくって。
「…雪も、食べる?」
ひょいと雪の目の前に持っていくと、雪は笑顔でポテトを口に運んだ。
「んー、やっぱうまいな」
雪とわたしは、結構好みが合う。
「だよね。あ、早く紫苑たちのところに戻らないと、花火始まっちゃうね」
空を見上げて、すっかり日の落ちた藍色にそう言うと、雪もそうだなと言って紫苑たちのいる方に足を向ける。