ハッピーエンドなんていらない
そうして歩き出した雪が、サラッとわたしの手を握った。
「え、雪?!」
慌てて払おうとするけれど、しっかり掴まれてそれはかなわないまま。
「ほら、人多いし、逆流して迷子になると困るから」
雪は前を向いたまま、さらにわたしの手をしっかりと握りしめた。
小さく震えるわたしの手。
緊張か、恐怖かは分からない。
湊に見られて誤解されたくなくて、手を離したくてたまらない。
いっそ誤解されてしまって、勢いでも雪のことを好きになれたなら。
いくら雪が紫苑を好きでも、紫苑の彼氏じゃなきゃ頑張れるのに。
結ばれることじゃなくて、想いを断ち切ることに精一杯になって。
馬鹿みたい。
雪の手に、わたしも力を込める。
思い切り、ただの八つ当たりだと分かっているけれど力を込める。
「あ、2人ともいた」
丘の上、いつもの場所を雪が指差す。