ハッピーエンドなんていらない
痛む胸に下を向くと、雪がわたしの頭に手をおいて上を向かせる。
「ちょっと、髪崩れるっ」
慌ててその手を振り払うと、雪は空を見上げたまま、
「花火見ないの?」
花火を見つめたままそう言った。
まるでわたしのためみたい。
雪が紫苑を好きなのは知ってる。
だから見たくなくて花火を見ているのだろうけど、わたしにまで見せないのは、わたしのため?
だとしたら、バレてる…?
嫌だよ、バレたくない。
隠し通さなきゃいけないの。
わたしは、この思いを隠していかないと。
嫌なんだよ、親友の彼氏に恋してますなんて。
ああもっと、綺麗なカタチの恋ができたなら。
「…見るよ」
気付かれないように、悟られないように、ふいっとそっぽを向いてからまた空を見上げる。