ハッピーエンドなんていらない
1.
秋祭りの日から、1週間くらいが経っただろうか。
「…また、来たの?」
1人きりだった図書室に、見慣れた人影が入ってくる。
「うん、今部活休憩だし」
袴姿のまま、本を読むわたしの前に堂々と腰をかけるその人。
それからわたしの読んでいる本を見て、「またホラーか」と呟いた。
そうして10分くらい、特に何かするわけでもなくそこに座っていて、部活の方に戻っていく。
最近の放課後の雪は、いつもそんな感じだ。
秋祭りの日の帰り、雪はわたしの異変に気付いていた。
帰ってから届く個人トークはわたしを心配するものばかりで、胸が痛くなった。
一方の紫苑と湊は何も知らない様子で、4人のグループトークの方でメッセージを送ってきた。
『楽しかったね』、『また来年も行きたいな』って、見てて悲しくなるようなトークだった。
…また、来年、か。