ハッピーエンドなんていらない
目に入った本を適当に手に取る。
何ページかめくってから、読みたくなくなって本を戻した。
王道の、甘ったるい恋愛小説。
よく見ると漫画を小説化したものらしく、余計に甘ったるかった。
チョコレートみたいに、甘くて、ほろ苦くて、でも美味しい。
そんな恋愛小説は正直、今は特に読みたくない。
主人公がちゃんと好きな人と結ばれてハッピーエンド、みたいな。
チョコレートというか、ココアかも。
そういう恋愛をココアに例えるなら、わたしの恋はブラックコーヒーといったところか。
「…あれ…?」
ふと窓の外を見て気付いた。
湊しか、いないのだ。
部活の休憩時間のたびに、湊は水飲むついでに紫苑に会いに行っている。
女子バスケ部とサッカー部の休憩時間はよくかぶる。
そして今の休憩時間も例外なく、他のバスケ部の人が外に出てきて話している。
でも、紫苑がいない。