ハッピーエンドなんていらない



湊は他のバスケ部の人に話を聞いたあと、首を傾げてグランドの方に消えていった。

その背中すら、愛おしい。

そして、どうしようもなく胸が苦しくなる。


その背中をジッと見つめてから、席に戻ろうとした時だった。


ガラッ、と大きな音を立てて、図書室の扉が開いた。

雪の休憩時間はついさっき終わったばかりだ。

考え事をしていたとはいえ、そう時間は経っていないはずだ。


不思議に思って扉の方を見ると、そこには息を切らした紫苑が立っていた。


「え、紫苑…?」

肩で息をする紫苑に、どうしたらいいかわからずとりあえず声をかける。


紫苑は息を整えてから、ふわりと笑みを浮かべた。


「遊びに来ちゃった!」

えへへ、と笑う紫苑の笑顔。

かわいらしくて、劣等感が心を埋めていく。

< 53 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop