ハッピーエンドなんていらない
その言葉にさえ、どうしようもない劣等感を募らせながら、わたしは笑みを貼り付けた。
「おもしろいから、ね」
本よりも、ずっと。
湊が好いてくれるなら、きっと、スポーツが好きな方がいい。
そんな綺麗に笑われても、感じるのは劣等感。
劣る、なにもかも、紫苑よりも。
「おもしろい、か。わたしは本読んでると眠くなっちゃうもんなぁ…。
それに、ここの本読み尽くしちゃったなら最近暇なんじゃない?」
紫苑はあたりを見渡しながら不思議そうな顔をする。
そんな紫苑にニコリと笑いかけて、目に入った近くの本を手に取る。
「新しい本、入ってくるし。
それに、最近はお客さんがよく来るから」
わたしの言葉に、紫苑は「客?」と首を傾げた。
「え、お客さんって、例えば?」
複数いると思っているらしい紫苑に、
「例えばって、1人しかいないよ」
雪を思い浮かべ思わずクスッと笑う。