ハッピーエンドなんていらない



そっかぁと語尾を伸ばした紫苑の声が、やけに悲しそうだったのに気付いた。

一応、わたしは紫苑の親友だし、それなりにそういうことは分かるから。


「それが、どうかした?」


紫苑は別にと首を横に振る。

「たまにね、剣道部の休憩時間とかぶったときに雪に会いに行くんだけど、最近は全然いなくて。

そっか、彩芽のところに来てたのか…」


差し込む夕日に、紫苑の頬がオレンジ色に照らされる。

オレンジとピンクの混ざった空の方をちらっと見た紫苑は、深くため息をついた。

それがなんのため息なのかわからなくて戸惑ったけれど、紫苑は気にしないでと笑うばかりだった。


「そうだね、最近は。

本当に忙しいとき以外は遊びに来てるかな」

ただそこに座って、何も読まずに帰ってしまうけれど。

ただそれだけでも、1人じゃないことが嬉しかった。


誰かが側にいる安心感が、どんどんとわたしを弱くさせると知っていても。


わたしは、雪が来てくれて嬉しかったりする。

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