ハッピーエンドなんていらない
ふと紫苑を見ると、わたしをジッと見据えていて、ページをめくりかけていた手を止める。
小さく首を傾げると、紫苑はやわらかく笑った。
でもどこかぎこちなくて、ツクリモノのような笑み。
「彩芽はさ、雪のこと好きなの?」
わたしを見据える目が、痛く、深く突き刺さる刃物のようだ。
予想外の質問に一瞬戸惑った。
だけどすぐに平静を装って笑って、
「幼馴染としては、好きだよ、普通に」
当たり障りのない答えを導き出した。
恋愛対象として好きか、と聞かれているのはわかっていた。
だけど、わかっていたからと言って、恋愛対象としては好きじゃないという答え方は、気があるようにもとれる。
少なからず、気になっているようにも。
だから、友達としては好き、という答え方にした。
当たり障りのない、普通の回答。
いつも通りの、笑顔を貼り付ける。