ハッピーエンドなんていらない
一瞬ホッとしたような表情を見せた紫苑は今度は真剣な顔をして、
「じゃあ、湊?」
優しく、鋭くわたしを貫いた。
「…え?」
分かりきっているような紫苑の目が、わたしを切り裂く刃物のようで。
裁判にでも、かけられているような。
正しい答えを出さないともう戻れない、それが苦しくてたまらなくて。
息を、のんだ。
「湊のことが、好きなの?」
貫く言の葉。
グサリグサリと、一音一音が心に刺さるように響く。
そのピリピリとした空気に緊張して震える唇の端を吊り上げて、笑みをまた一つペタリと貼り付けた。
「いや、だなぁ…」
やっと絞り出した声は、なんとか震えずに済んだ。
「湊も、幼馴染としては、好きだよ…?」
だから、嘘だってサラリと出てきて。
「えー、本当に?」
紫苑の目が、わたしの答えが真実でないことを疑うけれど、
「本当に。湊も雪も、ただの友達、ただの幼馴染なんだから」
ね?と言って笑うと、紫苑もそうだよねと言って笑ってくれた。