ハッピーエンドなんていらない



空だって、流れていく雲とかを眺めることは好きだけれど、たまにはつまらなくて。

ただただ分厚い灰色が覆い尽くしているときは、それこそ図書室の本を読み漁っていた。


暗い灰色はわたしの心みたいだから、嫌いだった。


「空かぁ、今日はうろこ雲が見えるね」

紫苑に言われて気が付いた。

秋らしく、空を流れるうろこ雲に。


「ほんとだ、綺麗」

規則正しく並んだ雲にそう呟くと、紫苑もそうだねと笑みを浮かべた。


日は沈みかけていて、空は藍色に染まり始めていた。

オレンジ色は西に消えていって、東から藍色が広がっていく。


チラッと時計に目をやると、そろそろ部活が終わる時間だった。

「紫苑、結局部活は大丈夫なの?」

少し心配になってそう尋ねると、紫苑は時計を見て驚いて立ち上がった。

「うそ、もうこんな時間?

ちょっと長居しすぎちゃったなぁ…」

失敗失敗と言いながら、ゆっくりと扉の方に歩いていく。


「お腹痛かったとか、適当に言い訳しといたら?」

「うん、そうする」

最後に2人、目を合わせて微笑んで、紫苑はそのまま図書室から立ち去った。

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