ハッピーエンドなんていらない



紫苑が立ち去ってから、力が抜けてしまってその場にへたり込んだ。

…バレてないよね、わたしの想い。

紫苑の彼氏に恋してますなんて、紫苑が大切な親友だからこそバレたくない。


だけど少し、怪しかったかな。

雪のこと聞かれたときと違って、湊のときは露骨に戸惑っていた気がする。

わたしの杞憂なら全然いいんだけど、もし態度が違っていたら紫苑にはバレてしまう。

親友だもん、ずっと一緒にいた親友なんだもん。


「…ホラー小説でも読もう」


こんなときは恋愛ものも友情ものも読みたくないから、ホラー小説を読む。

深呼吸をして心を落ち着かせてから、持参の小説を取り出して開いた。


だけど数分も経たないうちに扉が開いた。

まだ1ページも読めていなかったのに、紫苑と湊、それから雪が来てしまったのだ。


雪は最近早く来るから、湊たちと一緒なのは珍しくて、向こうの3人とこちらの1人の間に境界線が見えた気がした。

…やっぱり、寂しいな。

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