ハッピーエンドなんていらない



「いやー、びっくりしたよ。

さっきそこで先輩に怒られてる紫苑がいてさ、まあ注意してたくらいだけど」

「えへへ、部活サボったら唯先輩に怒られちゃった」


コラ、なんて紫苑の頭を軽く小突く湊。

そんな湊に相変わらずえへへと笑う紫苑。


「ついさっきまで図書室に来てたからね、紫苑」

わたしが湊にそう告げ口すると、紫苑が「彩芽の裏切り者!」と言ってムッとした。


「休憩時間だけならまだしもなぁ…」


呆れ顔の雪に、湊と揃って大きく頷くと、紫苑はごめんなさいとまた笑った。

「雪は、ちゃんと休憩時間だけ来てるらしいもんね」

さすがと感心する紫苑に、雪はまあなとドヤ顔してみせた。


「さて、それはいいから帰るか」

湊が紫苑の手をとって笑いかける。


その笑顔が、胸をギュッと締め付ける。

準備を整えて、図書室を出て、妙に廊下に響く扉の音が虚しかった。

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