ハッピーエンドなんていらない
幸せそうな2人を見るたびに胸が締め付けられて、何度も涙がこぼれそうになった。
だけど必死に涙をこらえて笑って。
「じゃあ、また明日」
なんて、分かれ道で2人と別れる。
そこからはわたしと雪の2人きりだから、なんとか涙をこらえることができた。
それなのに、
「ねえ」
雪はわたしを簡単には返すまいと腕を掴んだ。
振り返るわたしに、雪の鋭い目が突き刺さる。
それに怯むわたしに雪は、
「彩芽さ、湊のこと好きでしょ」
爆弾をポロリと落としていく。
一瞬、声が出なかった。
否定の言葉が出てこなかった。
「幼馴染、としてはね」
やっとの思いで絞り出した一言に、雪は疑いの目を向けた。
「でも、」
わたしの精一杯の言い訳を、否定しようとする雪は、きっともう分かっていた。
「だから、ただの友だちだって。
もう、なんで紫苑とおんなじ質問するのさ」
それでもわたしの口は嘘を吐き続けた。